一語一絵「みどりの文」

~庭にはひとつの物語といちまいの絵があります~
                             専務理事 中嶋 都
1.はじめに
 「庭には ひとつの物語があり いちまいの絵があります」。庭に込められたあなただけの物語を手紙や絵手紙、写真で伝えてみませんか。そんな思いで始めた「みどりの文」募集も平成29年度で第12回を迎えました。応募期間は4月28日(よいにわ)~8月28日、発表は9月28日(日は、すべて「にわ」で統一しています)、応募部門は手紙・エッセー、絵手紙、写真です。
 平成29年度は、国内外より過去最多の839通もの応募がありました。応募者は、年代別には60代以上の方々が半数を占めておりますが、応募者8歳から93歳までの老若男女にとって「みどり」は共通のテーマであります。年代や生きている日常の環境によっても、みどりの表現は異なるものの、それぞれの四季折々の暮らしの中に「みどりの生命力」を感じ、生きる勇気を授かっている。そして、記念樹やみどりの風景、庭等に亡くなった人たちとの思い出を重ね合わせ、魂が永遠にそこに宿り、いつも私を見守ってくれている、と感謝している人たちのなんと多いことか。
2.点字の手紙
 この「みどりの文」は12回を重ねてきましたが、毎年、県立視覚支援学校の生徒さんからも点字を含めお手紙をいただきます。その中で生まれつき全盲の生徒さんがこんなことを綴っています。「福島駅に降りるとドーナツやさんの匂い。その匂いから数十歩歩くと曲がり角。匂いは私にとって歩く指標です。町の中にもっと香りのするみどりがあれば楽しいです」と。バリアフリーも点字ブロックも音のなる信号機ももちろん大事ですが、「香りのあるまちづくり」これには全く気づきませんでした。本当に人にやさしいまちづくりとは、という課題を突き付けられたようで大きな衝撃を受けました。また、登山が大好きで中途失明された生徒さんは「最後の登山にこのふるさとの山の緑を目に焼きつける」と点字での手紙が届きました。
3.希望のみどり
 「みどり」への思いは、それぞれの人生です。そしてその背景には必ず時代があります。平成23年3月に起きた福島第一原子力発電所の爆発事故により、避難された方々からは「手入れのできない庭に申し訳がない」、「半年ぶりに見た庭は雑草だらけだったが、その中に何事もなかったように花は咲いていて、涙が止まらなかった。がんばる勇気をもらった」、「何も持ち出せずに避難先で大好きなバラを1本買い、黄色い花が咲いた。私は、その花に”希望”と名付けた」と。
4.人生を学ぶ
 この震災を境に、みどりへの思いは日常生活にもっと深く根づき始めたと感じます。60代以上の世代が次世代にではなく、その次の世代にみどり豊かな環境を残したいという願い。そして回を重ねるごとに、若い世代からは、祖父や祖母がみどりを大切にしている姿から人生を学び、その思いを必ずつないでいきたいという強い意志のメッセージがたくさん寄せられるようになってきました。
 建設業界でこのような文化的事業を実施できるのも、造園業界が一番一般市民に親しみがあり、信頼できる業界だからではないでしょうか。
5.繋ぐ
 本来、福島県は「福が満開ふくのしま」ですが、まだまだカタカナで書く「フクシマ」が存在しています。大変口惜しく残念な状況ですが、これが現実です。大切なふるさとの一部は傷つけられたままですが、これからも福島県造園建設業協会は、応募者が寄せてくださるたくさんの「みどりの文」をこのふくしまで紡いでいく思いです。これからも、この思いが日本各地で続いている自然災害により被災したふる里の緑再生や緑豊かな環境保全に役立つことを願い、発信し続けていきます。
               「公園緑地」第78巻5号(通巻405号)平成30年3月23日発行 に掲載

                           「みどりの文」第4回開催当時のチラシ(2018年)

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